15って数字どっから来たんだろうね?


どうも。
漫画好きとは言うものの最近の週刊少年誌についていけてない6号です。

サークルチェックやら何やらで日記更新する暇なんてまるで無かったんですが、そんなことしてるうちにDN界隈では何か面白そうな企画が流行ってるじゃないですか。
鬼畜さんが「絶対食いついてくると思ったのに」と言う漫画15企画。まあ確かにそうですね。これに反応しないと僕じゃないですね。

と言うことで個人的ベスト15。
一応好きな順番で並べてみましたが正直甲乙つけ難いものが多すぎたんで順位にあまり意味はないです。競うところ違うしね。


15/『皇国の守護者』伊藤悠
・戦争漫画と言うジャンルを、決してマニアックになり過ぎずに表現した稀有な漫画。戦争を描きだすのに兵器を軸にしないその作風は臨場感と恐怖感たっぷりに読者に訴えかけてくる。これから、と言うところで打ち切りになってしまったのは本当に惜しいですが、其処まででも十二分に楽しめます。

14/『魔人』大暮維人
・何でこんな漫画かけるのに『天上天下』は……と思わず唸ってしまうほど面白い作品。人間対人外の構図を上手く活かしながら最後の最後で正に人間チートで乗り切るその姿に全僕が惚れた。デコッパ良いキャラし過ぎ。

13/『夜の燈火と日向のにおい』鬼魔あづさ
・ストーリーどうこうでなく雰囲気と言うか空気感が好き。まあ他人に貸す時は2巻から貸してますがねwww
たまに妻と娘に先立たれた父ちゃんの姿に涙が堪え切れなくなる。

12/『ゴールデンデイズ』高尾滋
・最終巻に持っていかれたで賞NO1。ラスト近辺にページを捲りたくなくなってくるのが微妙に主人公の心情とリンクしてるようでまたそれがグサッとくる。

「みえてるかあ」

11/『秘境探検ファム&イーリー』田中久仁彦
・僕としては珍しく絵の評価でランクイン。話も面白いんだけど単行本化されてないのが多いので読むのは不可能かもしれない。最後の方どうなったんだか?

10/『寄生獣』岩明均
・胸が!!胸が痛い!!
日常から一気に切り替わる非日常の世界、すぐそばにあったものが崩れさる恐怖と悲しみ、残酷な現実をこれでもかと言うくらいに見せつけておきながら、それでもなお人間であろうとする主人公の姿に胸が痛い。
具体的には3巻60ページ。

ああああ。

9/『サイコスタッフ』水上悟志
・短期連載漫画の最高傑作。最初からゴール見えてたからこんな漫画が描けたのかもしれない。カバー裏の作者コメに「ああ!!」となって壁を叩く人多数。

8/『鋼の錬金術師』荒川弘
・少年漫画の王道を行きながら最後の最後まで緩まなかった、大長編の中では類稀な傑作。綿密に張り巡らされ過ぎた伏線にも混乱することなく読み切れたのは構成力の高さゆえでしょうか。『百姓貴族』も合わせて是非。

7/『トライガン・マキシマム』内藤泰弘
・男は黙って背中で語る漫画。グッサリくる台詞回しやら、いちいち格好良いガンカタやら、男なら熱くならない訳が無い。漫画そのものの格好良さとかスタンスって意味では一番好きかもしれない。新装版でカバー裏のアレが無くなって切ない思いをしたのは僕だけではないはず。

6/『レヴァリアース』夜麻みゆき
・幻想的な雰囲気を見事に演出しきったファンタジー漫画の傑作。ファンタジーの王道を行きながらも残酷なだけの展開にはならず、登場人物たちの人間臭さや魅力を上手く描いて共感できる話にしているのは今見ても凄いと思う。
あとラストシーンは何度見ても神。

5/『お迎えです。』田中メカ
・泣ける漫画部門第1位。なんかもう涙腺が緩んでしょうがない。とは言っても悲しくてボロ泣きとか悔しくてボロ泣きとかそんなんじゃなく自然と目が潤ってくる不思議仕様だから安心。その上読み終わった後は妙にさっぱりするもんだから病みつきになる。
冷蔵庫からホッカイロが出てきたシーンなんかもう……!!!

4/『王ドロボウJING』熊倉裕一
・とにかく世界観が好きな漫画。作品の主題が一遍ごとに変わり、それに沿ったストーリ-が登場人物とともに魅力的に展開していく。難しいことは考えずに楽しめる、まるで映画のような漫画。それでいて最後の最後はキッチリ決めてくれる辺りが実に素敵。
終わり方なら第7監獄だけど話全体ならやっぱり時間都市かな。ミラベル可愛いよ。

3/『まじかるストロベリィ』まつもと剛志
・優しい漫画。それ以外の表現方法が思いつかないが本当にそんな漫画。
誰も傷つけないように、誰でも読めるように描き出されているその空気感にはただただ圧倒されるばかり。比べたり競ったりすることに疲れたら是非。

2/『ジョジョの奇妙な冒険Part5』荒木飛呂彦
・あえてジョジョから挙げるならば第5部。正にジェットコースターのような高速展開を発想と機転で乗り切るその姿は、力押しと努力だけで乗り切ろうとする脳筋漫画とはまた違った「人間の強さ」を見せつけているかのよう。他のジョジョ以上に話の連続性が大事になっているので一気読み推奨。夜中に読みだすと朝になってしまうので気をつけましょう。

1/『G戦場ヘヴンズドア』日本橋ヨヲコ
・読んでる途中に心臓がバクバクいって足もとがふらついてきて知らぬ間に涙どころか吐き気まで出てきて手まで震えてくる、あらゆる意味で衝撃的な漫画。
それでいて読み終わった後には清々しい気分になってるんだから凄い。
最後のシーンが、まるで全てが救ってくれるように感じられる。
本当に素晴らしい漫画ってのは『死にたくないなあ』と思わせてくれるんだと実感した。



こんな感じですかね。

連載終了した漫画だけで行けそうだったのでまとめてみました。
並べてから見ると、ある程度誰にでもお勧めできる作品ばかりだったので一安心です。
まあ若干(どころじゃなく)マニアックなのも多いかもしれませんが。
1作者1作品縛りとか無かったらジョジョとかバシとか色々増えてた気がしますが……。
好きなのをあげてくとキリがないので15くらいでちょうど良いのかもしれない。
メチャメチャ悩んだけど。




さて、明日は3日目だ……。


では皆様、よいお年を。
……まさかテレビで紹介される日が来るとは……。


http://www.nicovideo.jp/watch/sm5828550


考えてみるとあんまりMADでネタにされてるの見なかったなぁ。
一つ除いて。


『○ね……。』が清々しく聞こえてしまうのは駄目人間の証拠。

むしろMステは何故これを紹介する気になったんだろうか?
ネタにはなるが黒歴史臭がします。
まあ面白かったからいいか。

強く儚い者たち

2009年1月7日 読書
今日はちょっと長い、漫画の話です。

先月、『ナイトメア・チルドレン』の新装版が最終巻まで出ていたのを見つけた。
これを読んだのは今から6年くらい前で、序盤から終盤まで印象深い話だったので記憶に鮮明に残っていたのだが、僕は未だにこの作品に対する正確な解説と言うか整理がつけられないでいた。
何度この作品を読み返しても、作者が表現したかったものや主題としたかったものが、あまりにもネガティブな形でしか見えてこないのだ。
今再び手に取ってみて、この作品の姿が何となく見えてきたので、今回はそれについて記述しておこうと思う。


藤野もやむは他に類を見ないほど“画風と作風にズレがある”作家だ。
絵の素養とストーリー作りの原点が、まるで別の次元にあると感じるほどに彼女の作品は突出している。
線が細く、愛らしい絵柄でありながら、ストーリーは何とも現実的と言うか容赦のない展開になることが多く、初めて読んだ時は実に驚いた。
少女漫画方面には疎いので確信はないが、少なくとも少年誌・青年誌において彼女のような作家が過去にいた記憶はない。
それほどに“藤野もやむ”と言う作家は僕の中で強烈なインパクトとして残っている。

本作『ナイトメア・チルドレン』はそんな作者の世界観や内部表現が如実に現れた作品であると思う。
人を傷つけずには生きられない者たちと、彼らを殺し尽すことを願った者たち。
嘘、欺瞞、エゴ、欲望、嫉妬……負の感情に苛まれながら、進むべき道を探し続ける彼らの前に現れる残酷な現実。
そして、いずれ来るたった一つの結末に向かって進む、逃れようのないストーリー。
そのどれもが狂おしく、また儚くこの作品を際立たせている。
何故、このような作品が生まれたのだろうか?


とある本の中で、作家がストーリーの作り方について質問されていた。
その作家はこう答えていた。
『まずラストシーンから考えて、其処までどんな展開で辿り着くのかを考える』

通常プロット(作品の大まかな設計図)を作る段階において、小説や映画の脚本はエンドシーンまでを一括で書いてしまう。そうしないと、単行本のページ数や映画の時間制限の明確な指標が見えてこないからだ。勿論、作り上げる過程において紆余曲折もあり、当初とは違ったエンディングを迎える作品も少なくないだろうが、大抵は結末を考えて生み出される。前述した『ラストシーンから考える』やり方もこの制作形態なら噛み合うことも多いだろう。
端的に表現すれば、これら制限のある作品は“終わらせるための作品”とも言える。

だがしかし、短編などでない限り、漫画にはこのやり方は当て嵌まらない。
ある程度制限のある小説や映画・ドラマなどと違って、大抵の漫画は“連載”と言うゴールの見えない作業から生み出される。
この連載と言うのがクセ者で、導入部分で読者を掴むことができなければ“打ち切り”の不甲斐無いゴールも見えてしまう、実にシビアな世界だ。
故に、如何なる秀逸な結末を考えていても、連載を終結させるにはまずその“序盤”が面白くなければ辿り着けない。
だからネームを作る段階においては兎に角序盤から読者の注目を集められる展開や方向性、キャラクターを考えることが第一で、物語の結末までを考えるまでには漕ぎつけられないことも多いだろう。
漫画の連載とは“続けるための作品”と言える。

面白い漫画が、終局が近づくにつれてつまらなくなっていくのはこの形態の弊害とも考えられる。
あくまで僕の主観ながら、今まで読んだ漫画の中で終盤の展開、あるいは結末がそれまでの面白さに匹敵、あるいは超えたものなど二割に満たないんじゃないかと思う。
完結をもって神となるか地に墜ちるか、その問題を“連載”で先延ばしにして、あまり考えていない作品が多いことは事実だ。
勿論、結末が見えたからと言ってページ数は増やせず、いきなり数年経って今までいなかった彼女が新登場してしかもオチが妊娠疑惑とかはあまりにも切なすぎて涙が出そうだが。
何処の十週打ち切り?

話を戻そう。
『ナイトメア・チルドレン』は、図らずしも前者の形態に行き着いた漫画である。
大本となる設定、核心となる部分を考えた段階で、この物語の行き着く先は決まっていた。

運命論に近いが、この作品は“こうとしか完結できない”物語だったのだ。

他の可能性を考えても選択することすら許されない、そんな絶対的な結末がこの物語にはある。
今でもこの作品に感銘を受ける理由は、恐らく其処にあるのだろう。
伏線や展開、選択の差異はあっても、向かうべき結末が一つしかない作品など、“終わらせるためにある”としか言いようがない。
運命を漫画の中に見出すなど、他に例がない。

今思い返してみると、この作品に感じたネガティブさは抗いようのない力に辟易している人々たちの姿に現われていたのかもしれない。緩やかながらも確実に進んでいく時間のように、流されたまま進むしかできない自分を、酷く矮小で心許無く思える。そんな諦観にも似た切なさと危うさが、儚げな画風と相まって悲しいものに感じられた。


得たものと失ったものがイコールになることは決してない。
選択しなければならない時が必ず来る。
自分自身の欲求と正面から向き合った時、見えてくるのはあまりにも無力な自分の姿だ。
全てのことが自分の思い通りにいく訳はなく、それでもより良い選択肢を必死に探しながら今を生きている。
だがしかし、時としてその今と言う現実すら揺らいでしまうもの……抗いようのない流れ、運命が目前に現れる。

この作品は、“偽れない自己の本質”と“運命”の残酷さを描きながらも、その結末に辿り着こうと、或いは逃れようと尽力する人々を、矮小ながら“価値のあるもの”として描いている。
辿り着けなかった結末、望み通りにならなかった未来、救えなかったもの。
それが無駄になったとは思いたくはない。
だからこそ。
自分から、相手から、過去から、未来から、現実から、運命から。
逃げ出さずに向かい合う姿が、結末と言う真実に進む姿が、世界の残酷さに打ちのめされる姿が、そして立ち上がろうとする姿が、如何に貴く、強いものであるかを描いている。
その姿が、たまらなく胸を打つのだ。



この作品の全てを、確信をもって語ることは多分永久にできないだろう。
だがしかし、この作品の価値を信じるものの一人として、“単なる残酷なだけの物語ではない”ことだけは語っておきたい。

そんな感覚が少しでも伝われば、漫画好きとしてこの上無い喜びです。


独りよがりな文章でしたが、読んで頂いた方は有難うございました。
興味を持たれた方は一読をお勧めします。

長くなりましたがこれで。
では。

今年一年で四コマとペラい本しかまともに増えてないな……。


どうも。
『あっちこっち』が何処の本屋もフライングしてなくて切なくなった6号です。

祝2巻発売。クリスマス。
だけど今日で学校は終わり。

……金曜暇だからフライデーの前に買いに行こうかしら。

欲しいかい?
>工場長


さて、この時期になるといよいよ今年も大詰め。
折角なんで年内に買った本の感想でも書いておこうと思います。
今年は……地層から判断するとコミックが200冊くらいですか。
流石に全部は書けないので、今年新しく読んだものや発売されたものの中で特に印象に残ったものをざっと書きます。
ついでにジャンルと個人的なお勧め度(最大☆☆☆☆☆)も書いておきますので、もし良かったら読んでみてください。……あらすじは書けないですが。

長くなるかもしれませんが、お付き合い頂けると幸いです。




『ONE OUTS』(甲斐谷忍・集英社)
ジャンル/野球
お勧め度;☆☆☆☆☆ 

個人的に今年一番面白かった漫画。完結したのは少し前ですが。
“その発想は無かった”って何回思ったか分からねえ。
ひっくり返したちゃぶ台を更に床ごとひっくり返す境地。
ところで18巻の最後のあの台詞(※ブルック)はどう考えても……。


『ラストイニング』(中原 裕・小学館)
ジャンル/野球 
お勧め度;☆☆☆☆☆

野球漫画が読みたかった。でも『ONE OUTS』読んだ後じゃ真っすぐな野球漫画は読めなかった。
でもってこれは真っすぐじゃなかった。だから面白かった。
……解説になってない。



『皇国の守護者』(佐藤大輔/伊藤 悠・集英社)
ジャンル/戦争伝記
お勧め度;☆☆☆☆☆

勝敗も善悪も関係ない、とてつもなく大きな力で動かされている、そんな漫画だった。戦争と言う非日常が、丸ごと日常の世界に持ち込まれたかのような感覚を覚える。
何度読み返しても、震えが走る。



『G戦場ヘブンズドア』(日本橋ヨヲコ・集英社)
ジャンル/漫画道
お勧め度;☆☆☆☆☆

初めて読んだとき、衝撃のあまり本屋で倒れそうになった。
そして何度も読み返して、最初は気付けなかった観点に辿り着いた時、涙が出て止まらなくなった。
未だに、作中の編集長の台詞に感銘を覚える。

「気づいちゃったんだ
誰も、“生き急げ”なんて言ってくれないことに」


「本当に素晴らしいものほど、さも必然のように其処に或る」

本来気付けないことを気づかせることは、残酷なんだろうか。



『少女ファイト』(日本橋ヨヲコ・講談社)
ジャンル/バレーボール
お勧め度;☆☆☆☆☆

でもって『G戦場ヘブンズドア』で嵌った僕の心を完全に墜とした作品。
この人の作品の「引き込み方」の上手さは特筆に値すると思う。
余談だが眼鏡→コンタクトへの変化が許せるのはこの作品くらいだと思います。



『SYNTHIA THE MISSION』(高遠るい・一迅社)
ジャンル/格闘
お勧め度;☆☆☆☆

“その発想は無かった”Part2。
美少女漫画+バキ=コレ。シグルイでもいいかも。
『美女で野獣』も嫌いじゃないですが、こっちの方がより肉々しくて好きです。
あとしっかり根拠のある展開がなされていて、力一辺倒じゃないのも高評価。
でも主役は番長とボクサーでいいと思う。
緊縛グレンチコ。

そんでもって何やってるんですか先生↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4576497



『たかまれ!!タカマル』(近藤るるる・エンターブレイン)
ジャンル/学園コメディ
お勧め度;☆☆☆

“その発想は無かった”Part3。本当に無かった。
何このジャックハンマー的展開。
書きたいけれど過激なくらいネタバレするのが忍びない。
途中から方向転換するが、それもまた良し。
何はともあれゆきえさんかわいいよ。



『美少女いんぱら!!』(北村游児・集英社)
ジャンル/4コマ
お勧め度;☆☆☆☆

しつこいですが“その発想は無かった”Part4。
妙なタイトルと帯が付いていると都合よく隠れる(※ビジュアル的に)表紙が素敵。そして予想をぶっちぎる展開に心根が騒ぐ。
狙って……やらなきゃこうはならないよなぁ。
作品全体は起承転結やテンポも良く構成されていて、実に面白おかしく読めます。



『マイガール』(佐原ミズ・新潮社)
ジャンル/ホームコメディ?
お勧め度;☆☆☆

山はあるのに波がない、のは佐原ミズの作風故だろうか。
別に諦めている訳ではないのに、どこか儚さに満ちている。
作品が“優しい”からだろうか?
依澄れいとかむんことかの作品を読んだ時のような感覚。

「あったけぇ……。あったけぇ……。」



『サムライうさぎ』(福島鉄平・集英社)
ジャンル/時代劇?
お勧め度;☆☆☆

打ち切られっちまったよバーロー!!
ジャンプには“優しさ”とか“強さ”を端的に表現するのが苦手な作家が多いのですが(って言うかオーバーな表現しかできない)この漫画は非常に珍しく、隅々まで人物描写がなされていて、更にテーマも素敵だったのですが……異色過ぎて受け入れられなかったようで。
せめて一昔前(『かもしか!!』がやってたくらい)のサンデーなら受け入れられたんでしょうが。
今期で一番惜しい作品。
次回作に期待。マジで。



『東京トイボックス』(うめ・講談社?)
ジャンル/ゲームクリエイト
お勧め度;☆☆☆☆

社会に迎合する=自分のエゴを引っ込める。じゃあエゴありきのクリエイターはどうする?
そんな現代の困った業界事情を取り上げた作品。
「誰かに手を引かれて世界を救うような勇者ならいらない」と言う台詞が今のゲーム業界を表してるようでZUNとくる。
……かと言ってアンサガまで行くとどうも……。
どうでも良いけど作中に出てくるゲーセンが良く行くところでちょっと驚いた。



『聖☆お兄さん』(中村光・講談社)
ジャンル/コメディ
お勧め度;☆☆☆☆☆

恐らく今年初単行本の漫画の中では最も光る作品ではないでしょうか。
キャラクターと設定を考え出した段階で勝ちだと思う。
宗教観とかからも切り離して読めるのも高評価。
そして何よりネタが最高。



『エリア88』(新谷かおる・小学館)
ジャンル/空戦
お勧め度;☆☆☆☆☆

今期の名作枠。やっと最終巻まで読めました。
何と言うか……言葉に困るのですが、読んでいて“死にたくない”とまで思える表現力は他の作家を見てもそうそう無いものだと思います。
正直この作品を語るにはまだ読み足りないと思いますので多くは語りませんが、一つだけ確かなことがあります。

これが、何十年経っても読み続けられるであろう、不朽の傑作だと言うことです。



『クリスティ・ハイテンション』(新谷かおる・メディアファクトリー)
ジャンル/ミステリー
お勧め度;☆☆☆

で、その新谷かおるの才気を再確認した漫画。デビュー20年以上経っても未だに現役で、更に全く新しいジャンルに手を出す作家なんてそうそういませんよ。
新谷かおる特有の“発想の転換”が随所に盛り込まれていて読んでいて非常に面白いです。



『賭博覇王伝 零』(福本伸行・講談社)
ジャンル/ギャンブル
お勧め度;☆☆☆☆

作者が本気を出しました。
……でもあんまりギャンブルやってなくね?
まあ命を賭ける=ギャンブル、って観点で書いてるんでしょうが。
ちなみに僕は多分4巻で死んでます。3巻のは兎も角、アレは絶対無理だわ。



『ミスミソウ』(押切蓮介・ぶんか社)
ジャンル/サイコホラー
お勧め度;☆☆☆☆☆

これもまた作者が本気を出しました。
今までの押切蓮介の作風を一新させた、真に迫る恐しさがあります。
本当に怖いのは幽霊でも何でもなく……。
これと言い『ゆうやみ特攻隊』と言い……今年は押切蓮介の当たり年でしょうか?



『戦国妖狐』(水上悟志・マッグガーデン)
ジャンル/妖怪伝記
お勧め度;☆☆☆☆☆

ああもう、なんで『惑星のさみだれ』といい『サイコスタッフ』といい、こうも僕好みの展開を用意してくれるのかッ!!
一巻ですでにお腹一杯なんですが、この先どうなる事やら。
来年度に期待です。
続き読みて―。



『夕凪の街 桜の国』(こうの史代・双葉社)
ジャンル/戦争(ヒロシマ)
お勧め度;☆☆☆☆☆

個人的今年度涙腺崩壊大賞。コミックの発売は結構前ですが。
怒りとも悲しみとも違う、やりきれない気持ちが湧き上がって止まらなくなります。
戦争と言う行為の本質が、この言葉に集約されているように感じます。

「わかっているのは “死ねばいい”誰かに思われたということ
そして 思われたのに生き延びているということ」




『氷室の天地-Fate school days-』(磨伸映一郎・一迅社)
ジャンル/フェイト
お勧め度;☆☆☆

まさかの公式スピンオフ。でもって主人公その他主役は殆ど出てこない。
生粋のファンよりも明らかにナナメ上の玄人向け。
でもってそんな磨伸作品が大好きな僕。
……どうせフェイトなんて磨伸その他アンソロでしか知りませんし。
主人公氷室だしね!!
だから他人に勧めにくいんだろうと以下略。
イタリア料理の美味しさを例えるときに

「肩の肉が抉れたり、歯が生えかわったりするくらい旨いんだろうなァ!!」

と表現できる人はこの本をお勧め。



『異国迷路のクロワーゼ』(武田日向・角川書店)
ジャンル/コメディ
お勧め度;☆☆☆☆

キャラクター的観点から見て今年1・2を争うヒット作。
主人公の潔いまでの土下座っぷりに全米が泣いた。
結構話も筋が立ってて好きです。……展開遅いけど。
そして何か勘違いされそうだけどあえて言う。
ユネはかわいい。かわいいは正義。


『ハニカム』(桂明日香・角川書店)
ジャンル/コメディ
お勧め度;☆☆☆☆☆

作者が「読みやすさと分かりやすさにこだわった」と言うだけあって、短いページ数で上手くまとめられていて、非常に読みやすい作品となっています。
また盛り上げ所もしっかり考えられていて、ふと時間が空いたときなどに読むのに最適な漫画となっています。
が、この漫画の本当の素晴らしさは、とある人物にあると言えるでしょう。
まさかツンデレでなくツン○○だとは……。
折角なんで読んでください、お勧めします。



『あっちこっち』(異識・芳文社)
ジャンル/4コマ
お勧め度;☆☆☆☆

今期の真打ち登場。4コマの上雑誌が雑誌だからある程度読み手は選びそうですが、このジャンルに抵抗のない人には是非とも読んで頂きたいです。
正にツンデレ・オブ・ツンデレ。
世の中のエセツンデレが裸足で逃げ出すくらいのハイスペック。
身悶えするほどのいじらしさは相当強烈です。
……て言うか狙ってやってるだろ主人公!!



僕が今年一年で印象に残った新作・旧作はこんなところですかね。
自分的にも今年は面白い作品に沢山巡り合えたと思います。
この他にも打ち切り枠で『GGG』とか、今年更に面白くなった『GA』や『棺担ぎのクロ。』、『みつどもえ』なんかも書こうかとも思ったんですが、今日はこのくらいにしておきます。
しかし『教艦ASTRO』はいつ新刊がでるんだろうか……。

では、長くなりましたが今日はこのあたりで。
お付き合い頂きありがとうございました。


あ、『MOONLIGHT MILE』と『GIANT KILLING』も書き忘れた。
しょっぱいな。
変態だ――――!?

ネタ知らなくても知っててもまずいなこの台詞。



どうも。
画像とタイトルと本文は関係ありません、6号です。

本屋に行くと浪費してしまうので自重したいんですが、いかんせん最近いい本が多いので嬉しながらも困ります。
年末に向けてお金を貯めたいのに。
かといってケチると新しい本が読めなくて禁断症状になるし。
……出版社からすればいいカモなんでしょうけど。

と言うことで、そんな時のためのネットコミック&イラストサイト。

折角パソコンも新しくなったので、昔ニコ動が見れなかった頃の僕を支えたサイトから最近見つけたサイトまでまとめてチェックしてみます。
ニコ動見れないって言ってた某工場長も安心だね!!
……ってビュアーないと見れないか。

ああ、ちなみに。
二次創作とかそもそも漫画とかゲームに興味ない人には辛いかもしれないのでその辺りはご注意を。
とは言ってもそんな過激なサイトを紹介する訳でもなし。

あとリンクに問題があれば指摘していただけると幸いです。



と言うことでまずはこちら。

《all over the place》 (漫画中心イラストサイトさん)

http://www.geocities.jp/dagacyo/

なんか最後に見たとこからカウントが200000以上増えてるんですが。
凄い伸び。
最初にこのサイト見つけた時はすごいシンパシーを感じたものです。主に朝霧の巫女とかヨコハマ買出し紀行とか。要するにマイナー青年誌。
今でもやっぱりこの人の絵は大好きです。


続いてこちら。

《え、があったりなかったり。》 (ゲーム・アニメ中心イラストサイトさん)

http://yu65026.hp.infoseek.co.jp/

……知らぬ間に東方まみれになっておりました。
なお良し。そんでもってしっかりルガールとかファーザーとかマニアックどころを突いてくるのも素敵。


どんどん行きましょう。

《殆ど死んでいる》 (アニメ中心漫画サイトさん)

http://www.almostdeadbydawn.com/

ギアスも2期になるまではマメにチェックしてたんですが……ガンダム00とか入ってくるともうネタがわからない。
しかしわからずとも上手い(引き込み方が)漫画を描かれるので、読んでいて飽きません。
過去ログとかリンク先とか未だにチェックするところも多く、ここがサイト探しの礎になってる気がします。
あ、あとガンバローゼンは神。


《ろくでなしの詩》 (ジャンル色々・漫画サイトさん)

http://rokudena-shi.com/top.html

良く見たら15禁って書いてあった。
が、それは我々が6年前に通り過ぎた次元なので問題なし。
そもそもサイト更新停止の方が大問題。

http://good-for-nothing.sakura.ne.jp/close/atoti.html

とはいっても色々事情もあるでしょうからしょうがないと思いますが。
復活を祈ります。


《まりおねっと装甲猟兵》 (東方中心イラストサイトさん)

http://www.geocities.jp/puterasu2000/main.htm

元々東方のネタ漫画で知った方なんですが、切り離して見るとイラストが凄い綺麗なのが分かります。
考えてみると表紙は毎回気合い入ってましたしね。

……ならどこであんな角度になるんだろうか?
TO-HO-GUNSには流石に笑わせてもらいました……ってこれサイトの話じゃない。
ちなみにシューティング畑の人らしいです。ぐわんげ。


《New’s Network 新》 (ジャンル色々・漫画サイトさん)

http://www5c.biglobe.ne.jp/~nyu/

いつの間にかよつばと漫画が凄い増えてる……更新早いなぁ。
肩が凝った時に見るとほんわかします。
育ったよつばは……個人的にはアリだ。


《うろんなページ》 (ヤングガンガンでやってる4コマって言えばまず通じる)

http://www.gahako.com/

相変わらずカウンター(戦闘力)がすげい……。
個人創作だけでここまでいくとは。
そしてしばらく見ぬ間にブタイウラが完結している事態。
やーらーれーたー。



こんなところです。
もし気になったらチェックしてみて下さい。
毎日全部チェックすると凄い時間かかりますが。
それをやってた僕はなんて暇人。

しかし。
今にして見直すと色々自重な感じがするけど、まあいいさ!!


話は変わりますが。
早いことにカルドセプトももう全国大会が開催中で……まあ既に何試合かしてきたんですが。
それで今度はまたカルド日記でも書くかもしれません。

では。

したらな!!
人には想像をする力がある。
しかし、想像は経験や感性から導き出されるものであるため、実感したことのない感覚や未知の出来事を思索することは非常に難しく、表現しづらい。
その為、大半は自分の経験や視野が及ぶ範囲内で物事を創造し、人と付き合い、生活していく。


『半径一メートル以内の世界だけ見て生きてきた』
(“フライ、ダディ、フライ”作中より)


この言葉に表わされているように、おおよそ人が生きていく上に必要なものは狭い範囲の中に大半があり、その外のものを想像することは殆ど無い。ある種の非日常として捉えられているだけで、実際にはその世界に踏み入ることすらないだろう。
だから、非日常を想像することはない。
そして、踏み込むこともない。

筈だった。


あの、八月六日に。
想像を絶する“非日常”に叩き込まれた人々も、まさかそんなことは考えてはいなかっただろう。
自分たちの世界が、一つの爆弾によって根こそぎひっくり返されてしまうなんて、思いもしなかったのだろう。


灼光と、爆風と、消えない毒がヒロシマを覆いつくしたあの日から、今日で六十三年になる。


どんなに狂った世界でも、入ってしまったのならばそこを“中心”にしなければならない。
果てしない絶望と悲哀と苦痛に、向き合っていかなければならない。
全てが奪われ、倒錯した日常。
あの日ヒロシマにいた人々の目に、その世界はどう映ったのだろうか?
多くの死と絶望を目の当たりにし、また自らも傷つきながら、破壊しつくされた街を生き延びて、何を見、考えたのだろうか?


想像にはそれを補助するツールが必要だ。
だからこそ、僕らが決して触れることのない“ヒロシマ”の現実を想像するためには、伝えられてきたものや、残されてきた記憶と回想を手繰ることが不可欠なのだ。
しかし、六十三年もたった今となっては当時を記憶している人は少なくなってしまっているだろうし、もう四十年も経てば誰も居なくなってしまうだろう。
では、果たしてそこで“ヒロシマ”の現実は考えられなくなってしまうのだろうか?

人には想像をする力がある。
自分の経験や感性に頼らずとも、他人の記憶やメッセージに共感することで、自分の世界からかけ離れたことも想像することができる力がある。
普段は使われないだけで、人には可能性に満ち溢れた力がある。

たとえ想像を超えた世界であっても、先達の経験や記憶に触れることで認識することができる筈なのだ。


“ヒロシマ”、そして“ナガサキ”は決して失われていい記憶ではないと思う。
しかし、実感できない今の世代の人々にとって、考える力を養うことは非常に難しい。
だからこそ、考える力を補うために、想像力が必要なのだ。

自分の経験でなくとも、伝聞でも、他人譲りでも構わないから、考えることだけはやめてしまわないように。
今の世代が、そして次の世代がまた同じことを繰り返さないように。

世界で唯一の被爆国として、また戦争と核を放棄した国として、“ヒロシマ”と“ナガサキ”が今なお発信し続けている尊いメッセージを考え、伝えていくことが戦争を知らない世代の、最低限の義務なのではないだろうか。


自分には関係のないこと、と思わずに、考えること。
まず一歩、日常の外の世界に踏み出してみてほしい。
自分には起こらないことを想像してみてほしい。

足りない世界を補填するために。
自分の世界を広げるために。

もう二度と、繰り返さないために。

一人から、また次の一人へ。



「このお話はまだ終わっていません

 何度夕凪が止んでも 終わっていません」

基本的に僕は本を買って読むタイプの人間で、大抵の本は単行本で入手して読み返してます。
と言うのも、本屋に行けるタイミングが物凄い不定期なので、雑誌は読み逃す事が多く、定期的に読み続けられる作品はほんのわずかだった為なんですが。

もちろん、定期的に読めなくても連載や新刊の情報などは入手できるので、好きな作家や作品の単行本は出たらすぐチェックして読んでいたのです。

で、それを踏まえて。
この『惑星のさみだれ』、物凄い好きな作品にも関わらず、入手したのが何と発売から二年経った先週と言う現実。

何故買わなかったんだろうなぁとか考えてみるとそう言えば余りに好き過ぎて雑誌を欠かさずチェック&何度も読み返す(立ち読みで)とかしていて内容殆ど覚えてるから買わなくていいやと思い至った記憶が。

……それで誰にも紹介できなかったとか言う、何とも勿体無い事態に気付いてしまったのが先日。

でも流石にもう勿体無さ過ぎるので。
今回は『惑星のさみだれ』です。


この作品の連載開始は三年程前。
かの問題作『戯言シリーズ』、その最終章の発売日が延び延びになっていた時期に、連載第一回を雑誌で読みました。

その頃ちょうど『戯言シリーズ』や『鏡家サーガ』を始めとする従来とは違う、冷ややかで斜に構えたキャラクター像や、感覚のずれに注目したストーリー、そして美味い具合に脱力した雰囲気を売りにした作品群に傾倒していた僕は、『惑星のさみだれ』の根底に流れる圧倒的なまでの諦観執着心に同じ臭いを嗅ぎ取ってしまったのです。
その余りの雰囲気作りの美味さに“戯言シリーズを漫画化するとこんなになるのかなぁ”と物凄い失礼千万な事を考えてしまう程でした。


もうあの第一話の台詞
『よくある巻きこまれ型タイプの主人公は相手にペースを握られるから良くないんだな』
を始めとする、従来の主人公像からまるでかけ離れた青年・夕日が生み出す抜群の空気感と、緩急やボケとツッコミが絶妙に合わさった雰囲気が一溜まりもありませんってくらいに僕のツボにクリーンヒットしまして。

すっかり墜とされてしまいました。


作品としての売りは言い出すときりがないので絞って言いますが……この作品に深みを増しているのは“表裏”の表現にあると思います。
と言うのも、普通作品を作る上では置き捨ててしまいがちな、まるで相反する感情や要素(夕日なら諦観と執着心でしょうか)をあえて持たせ同時に表現する事によって、人間離れした話でありながらも、何処か割りきれない弱さや脆さを抱えた登場人物達を生み出しているのです。

そして、そんな彼らを舞台に立たせることによって、厭世的な雰囲気の中に何処か現実めいた、(良い意味で)これまた割りきれない空気感を作り出しています。

更に、物語そのものに散りばめられた“裏”が幾度も姿を覗かせ、また隠れるたびに、より一層この作品世界へと読者を引き込んでいきます。

本当に読み出すと止まらなくなる程に、この作品には“読ませる力”と“読める喜び”が溢れているのです。

この作品はひねくれています。
まるで予想が出来ないくらい、捻じ曲がっています。

それでも。

これほどまでに“ひねくれていること”を楽しめる漫画は類を見ません。
これほどまでに話の先を考えるのが楽しい作品はありません。

そう思えることが、この作品が読みつづけるに値する証拠なのかもしれません。

最後に、恒例ですが。
今回は声を大にして言いたいとおもいます。

是非

読んでみてください。


少なくとも、二巻までは。
皆さん。

『天丼』はご存知ですか?

食べる方では無くお笑い用語の方です。
まあ僕もあんまり詳しい訳ではないのですが曰く“同じネタを何度も使い回すこと“らしく、一発ギャグが売りの芸人なんかが良く使っている手法です。

もちろんこれは“雰囲気作り”と言う土台が最大限に生かせる漫才やコントに使用されるのが大半であり、更に使い過ぎがかえって場を白けさせてしまう危険がある為、普通何度も読み返せるような“ギャグ漫画”等には向いていない表現です。

“予測不可能な面白さ”が無くなってしまうのですから。

事実、おおよそのギャグ漫画には一度や二度の“天丼”はあっても、しつこく使いまわしたり、早いスパンで“天丼”を繰り返したりする事は無く、全体的に避ける傾向に有るのが殆どです。

それだけこの“天丼”と言う手法は技量を必要とするのです。

で、その点を踏まえてあえて言いましょう。

この『極道一直線』の最大の売りは“天丼”にあると。

何故其処まで天丼天丼言っているか、理由は簡単です。

何せ作者本人が『ネタもコマもリサイクル!!』と言い放ってしまうほどのコピー&ペーストだらけなんですから。

しっかり数えたわけでは無いですが読んだ感覚としては恐らく

全体の7割以上が

使い回しでした。


天丼とか言ってる次元じゃないよ……。

で、ここまで徹底的にコピー&ペーストを使っていながら、ギャグ漫画特有の不条理&予測不可能な展開が薄れてしまう事は無く、むしろ的確過ぎるコマ割りで昔のネタを引っ張り出してくるからこそ生きてくる雰囲気がこの漫画には宿っています。

更に殆ど使い回しである故に使いまわしていない部分の破壊力はそりゃもう物凄いもので……今だかつてこれ以上にページをめくる度に度肝を抜かれた作品は思い浮かびません。

あらすじはこの際保留(最早説明不要まである)して……あらゆる意味で斬新過ぎるこの漫画、キワモノ好きもそうで無い人も是非一読を。

しかし……見開きで3回もあんな台詞を叫んだ漫画としては日本漫画史に残る作品だと思いますよ。
本当よく連載できましたよ(コミック化されてない話がある時点で何かヤバい……)。

あ、一言忘れてた。


『げげんちょ!!』
ISBN:4592177630 コミック 田中 メカ 白泉社 2000/06 ¥410


読書と言うのはつまるところ本との出会いと別れのようなものです。



出会って、読み始めて、考えて、楽しんで、時につまらなく思ったり、痛々しく思ったり、そうして時が経ち、読み終わって、別れる。

それがどんなに面白い本であっても、
それがどんなにつまらない本であっても、
『終らない本はない』という単純明快な理由によって、全ての本にはいつか別れがあります。
終りが、あります。

読書をして何らかの感情が生まれるのは僕ら読者が『本』という仮想の現実、その登場人物を通して彼らの“生と死”に共感し、擬似的に体験しているからに他ありません(勿論、作品の形態や方向性によってこの感情移入を拒んだり必要としなかったりそもそも出来なかったりする事も多いですが)。

当然、それは擬似的な物であり、またその感覚も“この人物がこう思うから自分もこう思うんだ”と言う遠回りな共感でしかありません。誰もがそう思っている保証も無ければ、そもそも作者がそう思わせたかったと言う確証も無いのです。

本を読んで導き出される感情に、感覚に、説明付けられる確かな足場など何処にも無いのです。



じゃあ、
じゃあ。

説明が付かないからと言って。
終わってしまうからと言って。
読み終わり、登場人物との別れを惜しみ、世界との別離を嘆き、物語の終りを名残惜しく感じる、そんな感情に。
共にあった、掌の中の沢山の思いが零れていく、そんな感覚に。
果たして意味など無いのでしょうか?
終わってしまったものは、ただ風化していくだけなのでしょうか?

『お迎えです。』はそんな“終わってしまったものに価値は無いのだろうか?”と言う果ての無い問いに向かい合った作品です。

この物語は全て“死”と言う絶対的な別れから始まります。
そして、其処からもう死んでしまった者……幽霊たちの“通り過ぎてしまったもの”に決着をつけようとします。
終わってしまったものを、辿り着けなかったものを。
再び“終らせて”、天へと送迎して行きます。

死んでしまった者と、遺された者。
離れてしまった者と、離された者。

そんな関係の中に、どうしようも無くある壁を取り去っていく。
そして終わってしまったものに、整理を、決着をつけていきます。

主人公達は物語の中で、実に多くの別れを体験していきます。
それらは全て“終わってしまったもの”から生まれた関係であり、行きつく所は最初から決まってしまっています。
どんなに仲良くなっても、どんなに思いを通じ合わせても、共に生きる事はもう出来ないのです。
それでも、彼らが『出会わなければよかった』と口にする事はありません。

それは僕らが擬似的にも現実的にも“出会いと別れ“、“生と死”を繰り返していくのと同じ理由なのかもしれません。

答えなんて無くても、価値なんて無くても、それでも。
確かにあったもの。
胸に去来したもの。
それらと“出会えて良かった”とほんの少しでも思えてしまうからこそ。
悲しいのと同じくらい、それ以上に嬉しいのです。

そして、その思いに共感できるからこそ、僕はこの本が好きなのです。



僕らは出会いと別れを、命ある限り延々と繰り返していきます。
そんな中でふと思うこともあります。
“終わってしまったものに価値は無いのだろうか?”と。

万能な答えなど何処にもありません。
しかし、その断片でも手にしたいからこそ、今日もたくさんのものと出会い、別れていきます。



その連鎖の中に少しでも答えが見えたなら。




終わった事から、進んでいく。





『ほんの些細な事だった
一度きり それきりで終わってしまう筈の

それでも 埋もれてしまうはずのそんな思いを
伝える事が出来るのは 聞く事が出来るのは
とても幸福な事なんじゃないだろうか』

ISBN:4757519605 コミック 小林 尽 スクウェア・エニックス 2007/02/27 ¥410

恐らく半年振りくらいにこの週刊誌サイズの単行本を買いました。
最近めっきり大判の本ばっかりだったので非常に珍しい事この上ないです。

……まあ雑誌的に考えれば当然青年サイズのはずなんですが、それは大人の事情という奴で。

さて。
作者の小林尽と言えば最近はあの『スクールランブル』のブレイクで一気に大物作家の仲間入りを果たした人物ですが、はっきり言うと僕はそっちの『スク(略)』には殆ど興味が無かったし、読んだ事も無かったのです。(この辺には僕の週間少年誌が苦手な心情が絡んでいるのもありますが。)
だから、この作品が雑誌で連載が始まった時にも、僕の興味は蚊ほども沸いてきませんでした。

で、そんなこんなの内に忘却の彼方へと行ってしまって。


そして先日。

本来なら縁が無かった、で終るだけのこの作品を僕は手に取りました。
こうしてコミック化され、この手に取るまで、何の意識もしていなかったこの作品を。

引き寄せられる様に、と形容するのが一番しっくり来る気がするんですが……一目見て、手にとって、閉じて、レジに直行する一連の流れの中で僕はある種の昂揚感を抱いていました。

『またこんな本が読めるなんて』と。


作者買い、表紙買い、おまけ買い、大人買いとあらゆる本の買い方を実践してきた僕がこの本に対してしたのは“ジャンル買い”でした。

好きな作品を挙げると限が無いんですが、好きなジャンルを挙げるとなるとまず真っ先に“ジュブナイル”と言う単語が浮かび上がってきます。

“ジュブナイル”、すなわち『少年少女を主人公にしたフィクション作品』。
まあこれは余りにもざっくばらんな表現なんですが、簡単に言えば“未知との遭遇をテーマにした作品”で“主人公が少年少女”と言う―
要するに子供の頃誰もが読むであろう冒険小説や怪談もの、あの手の児童向けの瑞々しい表現が大好きだったんですよ。ちょっと背伸びをして見た、という感じの表現が。

で、今回の『夏のあらし!』はそんな“学校の怪談”シリーズを観て育ったようなジュブナイル直撃世代の僕のツボに限りなくクリーンヒットしたのです。

夏の片田舎という舞台。
謎の高校生らしき少女との出会い。
古びた写真。
タイムトリップ。
そして浮かび上がる新たな謎。

考えているだけでご飯三杯はいけます。

“何者とも戦わなくてよかった昔”を思い出すような空気感と、“無力な子供の、精一杯の強がり”みたいなテイスト。
読み出すと止まらなくて一気に読んでしまった数多の作品と同じように、この『夏のあらし!』には何もかもが新鮮に思えたあの頃の輝きが全編に溢れているのです。

ジュブナイルと言うジャンルが最大のテーマとしている“出会いと別れ”、そして本編1ページ目の台詞など、結末を予想させるファクターは其処彼処にありますが、そう言った意識的な誘導も含めて、この作品の読者に対する“引きこみ方”は並々ならぬものがあります。

まだ僕が『好きなだけ』ではありますがこの作品が万人に『薦められる』ような結末を迎えるまで見守っていきたいと思います。

この作品の輝きが褪せないことを祈って。


『いやぁ、本屋って本当に良いですね。』
ISBN:4592137752 コミック 柴田 ヨクサル 白泉社 2003/08/29 ¥530

そろそろ書かなきゃならんだろう、ってことで今回は『エアマスター』です。と言うのも、実のところこの日記が想像以上にエアマスター成分満載でお送りしているからなのですが。


女子高生・相川摩季は“エアマスター”と呼ばれるストリートファイター。彼女の独特な格闘スタイルと埒外の強さは、次第に街にその名を轟かすようになる。そして、それに呼応するように現れる新たなストリートファイター達。純粋に“強さ”を追い求める彼女達の行きつく先は……?


前々回の『トライガン』が“背中で語る”漫画なら『エアマスター』は正にそのまま“語る”漫画。『トライガン』が印象的なシーンで“見せる”ならなんとこの漫画は台詞で“見せる”のです(“読ませる”だけではなく)。

簡単に例を挙げるならば、後半に非常に良く出てくる
1ページまるまる1コマで台詞のみ
と言う手法に代表される、台詞の存在感を最大限に活かしたダイナミックなコマ割です。主役であるはずのキャラクター達並に台詞が目立つ漫画なんてそうはありません。

もちろん、台詞なんて単体では意味が無く、それを語り、伝える“キャラクター”があって初めて成り立つものですから、当然其処に“キャラクター”は存在します。だから、この漫画の凄いところはもう一つ、“キャラクター”にあるのです。

これだけ台詞が目立つ作風でありながら、この手の漫画に起こりやすい“台詞によって逆に印象が殺されてしまう”ことは起こらず、むしろ“彼らを象徴するからこそ、彼らだからこそ”と言った『イメージ』、キャラクター像を存分に活かしきった表現がこの漫画には溢れています。
何と言うか、全体的に台詞負けしていない連中ばかりなので台詞を聞けば誰の言葉か大体分かるんですよね。『そんなこと言うのはヤツしかいない!!』みたいな。

彼らは自分を恥じるようなことはしません。
自分を偽るようなことはしません。
どんなに理不尽なことでも、どんなに無秩序なことでも、自分に卑怯に生きていないからこそ、自己を良く把握し向き合って生きているからこそ、彼らの台詞は胸に響いてくるのでしょう。

その人生をも、真っ向から挑んでいく。
そんな姿に、どうしようもなく憧れるのです。


戦闘シーン描写やおまけなど、どれを取っても頭一つ抜け出ている名作ですが、やはりこの絶対無敵の言語センスと超絶無比のキャラクター達を抜きにしてこの作品は語れません。ありったけの言葉を受けとって、彼らの熱い魂を是非感じ取ってください。



ちなみに個人的ベストキャラはルチャさん&小西様。




『とても とても とても愛してるときは何て言えばいいんだ?

やっぱり“愛してる”の一言だよな』

『ハッ……そのとーりだ』

ISBN:4785918705 コミック 平野 耕太 少年画報社 1998/09 ¥520

『諸君 私はヘルシングが好きだ
 諸君 私はヘルシングが好きだ
 諸君 私はヘルシングが大好きだ』


……と言うことで今回はじろう号に言われた通り『ヘルシング』ですよ。

世紀末、日本におけるサブカルチャーの一大ムーブメントとなった『吸血鬼』、その流れの一因と言えるのがこの『ヘルシング』です。

まああらすじに関してはご存知の方も多いでしょうし、この作品がそれほど予備知識というものを必要としない導入のされ方をしているのであえて大雑把に語らせて頂きますが。

英国王立国教騎士団……通称『ヘルシング』と国教に仇成す邪教の存在……吸血鬼との戦いがこの物語のメインです。勿論、他にも絡んでくる要素は多々あるんですが細かいことは後に回して。

この作品を読んで、まず感じるのが“物語の速さ”です。

導入部分から殆ど息をつく間も無くイスカリオテ第13課、ミレニアムと次から次へと新たなバックボーンが登場し、それとともに目まぐるしく移り変わっていく舞台。そして現れる新たな敵、敵、敵。

正に短編映画のようなテンポで進むストーリーに一気に惹きこまれてしまいます。

更に、この圧倒的な作品世界を際立たせるのが作者のあくなき感覚の追求です。

感覚に訴えかけてくる、という表現が正にぴったりなのですが、読者がその描写でどう感じるか、と言うのを非常に的確に判断して表現しているのです。

おぞましいものは極限までおぞましく、
醜いものはこの上なく醜く、
強いものはどこまでも強く、
格好良いものは果てしなく恰好良く。

そのシーンごとに動機やテーゼが考えられているのか、読者に『見せる』、イメージを『受け取らせる』と言う非常に単純にして難しいことをこの作品はかなりの高水準で達成しているのです。

そして、それを成り立たせている一因こそが『吸血鬼』と言う舞台背景
にあります。

ヒトでは無いもの。
ヒトには無いもの。
本来有り得ない『吸血鬼』と言うモチーフと、漫画であるが為の『フィクション』、その二つの武器を最大限に生かした究極最強の“偶像”。
求めても手に入らないからこその、嫉妬にも似た憧れ。

そう言った感覚的なハードル、絶対に乗り越えられない壁を示しているからこそ、どうしようもなく惹かれてしまうのではないでしょうか。

もう一つ特筆すべきはその緩急の激しさです。
そりゃねーよってツッコミをいれてしまうくらい緩い所は緩く、グダっているところはグダってます。
緊張感のあるシーンと無いシーンとの差が『ハーメルンのバイオリン弾き』並で実に笑えます。

ヤンひでえ。

……まあグダった後にしっかり切り替えさせてくれるのがまたこの作品の小憎らしい所なんですが。

あらゆる点で雪崩のように存在感をアピ−ルしてくる本作。
感覚的に読むと言う想像し難いことをしっかり実感できる良作ですので、未読の方は是非。

最後に。

連載で読んでいる人。

一緒に頑張りましょう。

……しかし月4Pって……まあ人情紙風船のみよりはマシだけど。
ISBN:478592005X コミック 内藤 泰弘 少年画報社 2000/06 ¥700

クライマックス寸前記念で今回は『トライガン』―『トライガンマキシマム』です。

もうお知りの方も多いと思いますが一応あらすじを。

新天地を求め宇宙へ旅立った人類が、荒野の星に辿り着いて百年あまり……ただただ乾いていくだけのこの星に現れた一人の男『ヴァッシュ・ザ・スタンピード』。『人間台風』と呼ばれるほどのトラブルメイカーである彼には狙われるある理由があり……。

まあ基本的にはヴァッシュを主人公としたガンアクション漫画だと思ってもらって相違無いと思うのですが。

この漫画の魅力は、なんと言ってもそのダイナミックな眼鏡戦闘シーンです。
人物や構図、状況などが非常に明確且つ鮮烈に描かれており、第三者であるだけの読者が自然と臨場感や緊張感を味わえるように工夫されています。
また主人公ヴァッシュのポリシ―である『人を殺さない』ことがただ一発当てればそこで終り、のガンアクション漫画とは違う『如何にして敵を戦闘不能にするか』と言う極限まで高いハードルを生み出し、更なる深みを与えています。

勿論、主役であるキャラクターにもシーンを盛り上げるに足る人物達が用意されており、そのアメコミ色に富んだ人物像はあまりにも例外的でありながら、物語を破綻させない絶妙なバランスでデザインされています。

キャラクターを象徴する台詞は決して多く無いですが、それでも存分にその魅力を感じられるのはヴァッシュ・ウルフウッドを始めとする背中で語る男像が堪らなく恰好良いからでしょうか。

奥深いストーリーや記憶に残る名台詞、カバー裏などこの漫画の魅力は他にもまだまだありますが、やはり僕はこれらの『背中で語る』シーン群をこの漫画の最大の売りとして推したいと思います。

ちなみに僕の個人的ベストバトルは、結構どれも甲乙つけ難いんですが4〜5巻のミッドバレイ&ガントレット戦です。
無論ベストシーンはやはり10巻のラスト、ベンチでのあの一幕があまりにも際立っていて他に浮かばないんですが。

完結まで後一回、未読の方ももう読んだ人もこの機会に全部読んで一緒に連載で最終回を読みましょう(ってまだコミック未発行分が相当あるか……)。

彼らが辿り着いた世界、その結末を、見届けましょう。

『今ここで俺は――  膝を折るわけには ゆかない』 

紹介12 エマ (1)

2007年3月1日 読書
ISBN:4757709722 コミック 森 薫 エンターブレイン 2002/08 ¥651

えー、無事に受かったので今回は平野耕太氏の好きなメイドNO・3『エマ』です。で、何故に『エマ』かと言うと,
試験当日の午前三時に一気に5巻まで読んで受かった
からです。……個人的には縁起が良かったので。

簡潔に内容を説明すると、19世紀末のロンドンを舞台にメイドと貴族の身分違いの恋愛を描いた作品です。
まあ恋愛ものと言うと僕はベターに尻込みしてしまったり、そもそも興味を持てなかったりするので今まで自主的に読んだことはあんまり無かったのですが,この『エマ』に関して言えば話は別でした。

そもそも苦手な理由が、ベタな心情吐露でしか登場人物の心理を表現できなかったりとか登場人物ももっと他にも考えるべき点があるだろうとかこんなハーレム状態ありえないだろうとかとにかく各所に突っ込みが入ってしまうのが大半の作品にあった為なんですが、この『エマ』にはそんなステレオタイプな表現はまるで無く,何と言うか作者の見せ方が上手いのです。

小説的な表現が全体に行き届いているとでも言うのでしょうか。飾り立てるような台詞をまくし立てる事はせず,風景描写や登場人物同士の間合い,雰囲気やその仕草など、いかに言葉を使わずに読者を引き込むかが十分に考慮されていて,その圧倒的な表現力にはただただ息を飲むばかりでした(5巻のあのシーンにはもうテンション上がりっぱなしでしたよ)。

また、見せ場を意識して,その場面へといかに読者を引き連れていくか,と言う工夫も存分に成されており,更に感情・心情の変化が静かに、且つ劇的に表現されていく所には、今までの恋愛漫画に辟易していた僕もまるで中毒の様に惹き込まれてしまいました。

作品そのものから漂ってくるヴィクトリアンな雰囲気もまた作品世界を盛り上げています。

まだ完結まで読んではいないのですが,少なからず5巻までの流れでも読むだけの価値は充分にあります。むしろ、漫画好きなら読むべきとまで言えるでしょう。

一味も二味も違う恋愛漫画『エマ』、メイド好きな人もそうで無い人も是非手に取って見てください。
ISBN:4592142497 コミック 西川 魯介 白泉社 ¥610

眼鏡成分8割増でお送りした前日記の流れを受けて、史上最強のフェチ漫画『野蛮の園』の登場です。
またまた一巻が絶版でした!!つう訳で3巻の表紙です。

えー、あらすじは……ま、まあ、高等専門学校に通う学生達の話ですよ、多分。どう考えてもやってることがアダルティ過ぎてそうは思えないですけどね。

まあ簡単にレビューをすると一億総眼鏡化計画の為にあるような漫画バンビーノが裸足で逃げ出すくらいのフェチシズム爆発漫画です。

荒くれ者の巣、『野良山高専』を舞台に、まるで作者のリビドーを爆発させるかの様に繰り広げられる暴走と妄想の日々。そして、志を持ちながらも欲望と混沌の日々に転げ落ちていく若き技術者の卵達。そのあまりにも荒荒しく、男臭い生き様にはお前ら本当に十代かと突っ込みたくなる事山の如し。

とにかく作品の概要としては男子学生のリビドーとフェチシズムの暴走がメインなのですが、それ以上に重要なのがこれでもかと言うくらいに脇を固める女性キャラ陣。眼鏡の同級生、その眼鏡の妹、眼鏡の後輩、眼鏡の図書館司書、眼鏡の女教授……

さ、流石『ヤングアニマル』……と思わず唸ってしまう狙いすましっぷり。いやぁ、よく分かってらっしゃる。

もちろん今のは一例で、その他にも種々に色濃いキャラが準備されており、それは正に作者がありとあらゆるフェチシズムに答えようとした努力の賜物で……男の中の男ですよ、西川魯介先生。

まあキャラが立っていれば作品もまた際立ってくるわけで……全編通してコメディテイストでありながら締める所は締めている辺りが作品としての質の高さを物語っています。

とにかく、この漫画は考える以上に感じる漫画ですので、あんまり野暮ったい説明は不要です。

野蛮に読んで、本能で実感しましょう。

そろそろMEGANEの魔力も解けるので、今回はこの辺りで。

Welcome to Savage garden!!
ISBN:4847034260 コミック みなぎ 得一 ワニブックス ¥1,050

初めに断っておくと。
この作品、読んだのは連載分どころか既刊発行分にすら追いついてません。にも関わらず何故紹介するかというと、途中評価だけでも存分に面白く、またあまりにも僕のツボを的確に突いてくるからです。

僕はストーリーで読ませる作品も好きですし、キャラクターで見せる作品も好きです。つまりは見せ所や山場を意識してる作品が好きなんですが。
この『足洗邸の住人達。』はそれらの一歩先――大元にある世界背景、すなわち設定で見せるタイプの作品で。
例えてみるならば、物凄い初期のRPGみたいにプレイヤー(読者)の想像というフィルターを通して、自由に世界を見る事ができる、世界観に広がりを与える事のできる作品なのです。
まあもちろん、鮮明な画像を想像しなくてすむ辺りは全然違いますが。

当然、話の筋書きもしっかりしてますし、何より絵も好みなのですが、それ以上に『王ドロボウJING』に始まり、『夢幻紳士』『黒髪のキャプチュード』『封神演義』『はいぱーぽりす』『マテリアル・パズル』『カミヤドリ』小説の『戯言シリーズ』、ゲームでは『WILDARMS』『ボクと魔王』『モエかん』等の作品群に在った世界観設定だけでご飯何杯でもいけますよ的な雰囲気にコロリとやられてしまった訳です。

なんかこう、作品世界中の“何でも有り”な雰囲気にも関わらず最強キャラが決まってたり、重要な役柄であるはずの人が設定だけで表には出てこなかったりするところが『締める所は締める、後は好きにしろ』と言った風味で想像(妄想)を掻き立てるのですよ。

メリハリが上手く利いていて、読んでいてだれる事はまず無し。あとは戯言シリーズの最終回みたいな事にならなければ完璧。

あらすじはこの際保留するのでまず読んでから存分に語ってください。

群を抜く面白さですから。

では、二巻を買いにいくのでここで。
ISBN:4840236992 コミック kashmir メディアワークス ¥1,029

タイトルがなぁ……とか思いつつ一読。
戦慄が走りました。
なにせ、今までいろいろ漫画を読んできましたが、青少年向けで
『法に触れる事を題材にした漫画』というのはあっても、作品そのものが
『法に触れかねない漫画』なんて初めてでしたからね!!
斬新過ぎるぜ!!メディアワークス!!

……まあ普通の人間が普通に読んでれば気づきませんよこんなの。気づかないからこそネタにしたんでしょうし。……調べないで気づいてしまった人は相当駄目人間ですね。僕を筆頭に。
まあ単語としては普通だから問題ないんでしょう。そう考えましょう。

えー、変な方向からアプローチしてしまいましたが。
この作品は、中学生である主人公の元に現れた『百合星人』、ナオコさんのあまりにもマニアック過ぎる概念と知識、そしてそれを元に展開される『人類総百合化計画』によって周囲のみならず読者まで振り回される……と言うあらすじで、コメディとしては生々しいネタと破綻寸前の展開が売りになっています。
タイトルから大きいお友達向けの匂いはするものの、純粋に読んでいて面白い部分も多く、(やはりネタは知っていた方が面白いかもしれませんが)また絵も上手で、仕上りは目を見張ります。全体的な作品としての質はかなり高く、多少読む人は選びますが(冗談の通じない人や純粋に興味のない人にはかなり進め難いかと)個人的には読んで見てもらいたい本ですね。是非、と言えないのが心苦しいですが。

そういえばこの本CD付きだったんですが(CDまだ聞けてない……)更なるメディアミックスとしてアニメ化するだのなんだの。未だ未確認なので何とも言えないですが……本当だとしたら気になりますね、多少。

最後に……
間違っても作品中に出てくる単語は調べないように。
知識として知っているのと実際目の当たりにしてしまうのではかなり違うと思いますし……それに捕まりたくはないでしょう?(ちょっとオーバー過ぎますかね?)

何も考えなくても十分楽しめる筈ですので、法に触れないラインでお楽しみ下さい。

それでも知りたかったら……。
ISBN:4757505221 コミック 氷川 へきる スクウェア・エニックス ¥620

『スパイシーさんは何処へ行った!!』

今回は『ぱにぽに』です。
連載当初は『あずまんが大王』のパクリ等の謗りも受けていましたが今ではそんな事も無くなりました。何故でしょうか?
それはこの作品が一重に今までの漫画には無い独自の路線で、且つ純粋に面白い漫画に仕上った為、ケチの付け所が無くなってしまった事による所が大きいと思います。

“独特な作風”と言われるこの漫画、形式は一話完結の1P漫画と言うのが正しい気がします。
大本のエピソードに沿って、通常四コマで行う“起承転結”を1ページ
でやる為、他の漫画には無いメリハリとオチの強弱、そしてダイナミックなコマ割りをかなり高水準で実現できています。更に、地味にストーリーや伏線なども意識されている為、読み込めば読み込むほど面白くなるという奥深さも持ち合わせています。

そして、“独特の作風”と言われる最大の要因があまりにも不条理なオチ刺激的なキャラクター群です。

前者はとにかく一見してみるとわかるのですが、悉く読者の予想外の方向からオチを付けています。そのあまりの裏切りっぷりに普通は引いてしまうのですが、其処を面白くしているのがこの作品の醍醐味、『ぱにぽに』だからしょうがない、と妙な納得までしてしまう始末。

後者は読んで字のまま、今までのギャグやコメディにはなかったあまりにも刺激的かつ大量のキャラクター群。この手の形式で人気投票まで可能なキャラ数に到達している作品はそうはありません。そしてそのどれもに色濃いキャラ付けが成されており、(一部例外を除けば)殆どキャラが被らない為、あまり混同すること無くかなり読みやすくなっています。実際に読んでみると結構好みのキャラがいたりするもので、ついついそのキャラがらみのエピソードには目が向いてしまいます。
この手の読者サービス的な要素(限定版特典とかアンソロジーとかも含めて)も絡まって人気作になっているんでしょうか。

今までに無い斬新な方向性が目を引く『ぱにぽに』、未読の方も一度だけ読んだ方も十巻に到達してしまう前に是非一気読みをお勧めします。

因みに個人的なお気に入りはD組の先生と南条さんです。
え、青の6号

スルー?
ISBN:4047134139 コミック gK 角川書店 2001/03 ¥630

先程何故か『ニア アンダーセブン』が人気ワードのトップになっていたので僕はそれを天の啓示と受けとって紹介に至る所存です。(流れに乗っただけ?)

この『ニア アンダーセブン』、アニメも製作されているのですが……どうやら後書きを読む限りはアニメが先のようです。僕はリアルタイムで読んでいた&見ていた訳ではないので、その辺りの事情はよく存じておりません。なので、今回はアニメには関連付けず漫画版の方だけ解説させていただきます。今度全部まとめて見ますので。

あ、何故か2巻になっているのは一巻の画像がなかったからです。
……在庫ないのね……。

まず、作品の導入部を呼んであまりにも自然に登場してくる
宇宙人に弱冠の違和感を覚えます。しかしそれも束の間、主人公を取り巻くしょっぱい事情と絶妙の空気感、そしてやがて来る爆笑ネタの嵐に違和感など何処吹く風、気がついたら一冊読み終わってしまいます。

この漫画の特徴としては、非常に的確且つ簡潔にツボを責めてくるネタ群が挙げられます。
つい先程読み返してみたら(確かじろう号辺りに貸したはずなのに何故かもう一冊ありました)アンダー大学生なる一言に苦笑。その他にもインド小麦の原産地がウランの埋蔵地だったり、拾ってきたテーブルが何故か雀卓だったりと、危険過ぎるネタやオチがふんだんに用意されており、今までに無いノリとテンポは正に説明不要の(説明してしまいましたが)面白さ。しかしトルチョックって……。

絶妙な緩さとごくたまに(本当にごくたまに)現れる緊迫感はしっかり世界観が練りこまれているからこそで、作品としての仕上りは非常に良いです。

そう言えば作者の安部吉俊さんはアフタヌーンの四季賞受賞者だったそうで……機会があったら読んで見たいです。

正に必殺の作品、『ニア アンダーセブン』、読んで笑わない自信があるならぜひ挑戦してみて下さい。
ISBN:4091882714 コミック 林田 球 小学館 ¥900

業界トップクラスにタイトルが素敵な漫画、『ドロヘドロ』の登場です。

手にとってまずその独特の装丁をしたパッケージに驚き、更に読み始めて2、3ページで今までにない斬新な切り口に圧倒されます。
この漫画の印象を一言で言うならば(月並みですが)正にタイトルの『ドロヘドロ』であり、そのニュアンス通り混沌と猥雑が入り混じった複雑怪奇かつ魅力的なストーリーには肉が弾け内臓が飛び散るかのような興奮を覚えます。(錯覚じゃないかも)

魔法使いの住む世界と、魔法使いたちが魔法の練習(人体実験)をしに訪れる街『ホール』がこの物語の舞台。主人公カイマンと友人のニカイドウは、カイマンのトカゲ頭を治し、記憶を取り戻す為に、その口の中にいる男の正体を探し始める……
と言うのが物語のあらすじなんですが、自分で説明していて話を見失いそうになるくらいこの漫画は練りに練られて複雑に入り混じった伏線が準備されています。かと言ってストーリーには作品性として存在する猥雑さや混沌故の歪みはあるものの、伏線によって話を決定的に見失ってしまうような事は無く、むしろ効果的に伏線が解決されていくその綺麗な筋道には作者の林田球さん(未確認情報ですが女性の方らしいです)の表現力と構成力の高さが伺えます。
更に、ドロヘドロの魅力と言えばなんと言ってもその登場キャラクター達。これほど読者に愛される敵キャラクター達なんて漫画じゃあまり思いつきません。

ストーリー、設定、キャラクター、ビジュアルセンス、そのどれを取っても圧巻の『ドロヘドロ』、今までに無い世界観に中毒必死ですので未読のかたは是非。

ついでに

いつも拝見させてもらっている
『えがあったりなかったり。』さんの方でイラスト紹介されてたんで気の向いた人はチェックしてみてください。前日の『WORKING!!』や遊び心満載の『ピュ―と吹く!!アンバー』など見所満載のサイトさんです。
http://yu65026.hp.infoseek.co.jp/

そうだ、9巻出てたから読まないと。

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